騎兵の書・JRA編

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第1回 記憶に残らない重賞ウイナー クラウンシチー



 みなさんはクラウンシチーが重賞ウイナーだということをご存知だろうか?
クラウンは7歳時に京王杯AH(今年から京成杯AH)を勝っているが、現在彼は9歳。今から2年も前のことだ。7歳、8歳はいても9歳以上となるとあまりお目にかかれないもので、特に関東では少なく、他には私の記憶が確かならテンジンショウグンくらいなものだろう。関西なば老雄ミスタートウジンの13歳を筆頭に、9歳馬がエスジーフラット、トウカイタロー、ドージマムテキ、ファンドリリヴリアの4頭がいて、最近までは10歳馬コンビのアラタマワンダーやトウカイサイレンスもいた。
 今回は、なぜ9歳にもなってクラウンシチーは走っているのかということを考察してみたい。ここからは私の勝手な想像の賜物なので、多少の失礼はお許し願いたい。
クラウンシチーは名前のとおり、穴馬の宝庫である友駿ホースクラブの馬である。兄弟はそろって活躍しておりその中でもゴールドシチー(阪神3歳S優勝、皐月賞・菊花賞で共にサクラスターオーの2着)が筆頭といえる。ところがシチーは関東ではクラウン、関西ではキョウトシチーしかオープン馬がいないのである。最近までアプローズシチーというオープン馬がいたが、春先に引退してしまった。つまりクラウンは関東シチーの看板なのである。海外G1を勝つようなクラブも出てきて、また後発の「絹」も有馬記念を勝ってしまった現在において、オープン馬がいなくなっては激しいクラブ間の競争に影響が出る可能性が高い。
 また、クラウンはいわゆる募集馬ではなく、シチー独自のシステムである無料提供馬なのである。これは入会時や購入時に無料で1口もらえるもので、確か8000口くらいに分割されている。つまり最大8000人の会員がクラウンを持っている可能性があるわけで、この影響も少なくはないだろう。
 そんなこんなで頑張っているクラウンシチーだが、京成杯AHに登録している。この文章のお目見えがレースの前になるか後になるかはわからないが、このレースと彼は非常に相性が良く一昨年は優勝、昨年は人気薄ながら3着に好走している。前走関屋記念ではあわやの4着。今回も買い目が無いわけではないだろう。

原稿 ロイヤルチャージャー


第2回 障害で花開いた快速ジャンパー ネーハイジャパン



 皆さんは障害レースがお好きだろうか?個人的には大好きであるが、どうやら私みたいな人は少ないほうの部類に入るようだ。
 ネーハイジャパンは、スピードののった低い飛越と先行力を武器に活躍し、東京障害特別と京都大障害の2つの重賞レースを勝っている。反面、高くて正確な飛越が要求される中山コースはあまり得意ではなかったようだ。ヨーロッパのどこの国だったかは忘れたが、障害の一番大きなレースの時に1年で最もお客さんが入るそうで、それほど障害は人気のレースであり、現地の人々の間で浸透している。日本でも障害レースを見直そうという動きがあるようだが、平地で見込みが無くなった馬が走るレースとして認識されている日本で、果たして障害の人気が右上がりになることがあるのだろうか。
 さて、今回は障害馬について考察してみたい。少し前までは障害といえばモガミだった。平地で未勝利であろうと、父か母父がモガミならその馬から流せばかなりの確率で的中したものである。しかし最近は傾向が変わってきている。モガミが種牡馬として活力が無くなってきたこともあるが、平地である程度成功した馬の活躍が目立ってきたのだ。今年春の中山大障害を勝ったノーザンレインボー、同じく中山大障害を制したマイネルトレドール、障害デビューから連勝を続けたアワパラゴン、これら3頭はすべて平地の準オープンでそこそこ頑張っていた馬である。ゴッドスピードに至っては、3歳重賞を2つ勝った上に障害でもタイトルを手にした。もちろん、平地の準オープンで活躍しながら障害では未勝利であえいでいるキングアドマイヤや、すぐに障害に見切りをつけて平地に戻ったマチカネエデンなどの例外もいる。逆に平地であまり勝ってなくても障害のチャンピオンになったポレールもいる。しかし平地で活躍し、その後頭打ちになった馬が、障害でもう1度花開くパターンは確実に増えてきており、これからも平地で実績のある馬が障害へ転向するケースは増加していくだろう。そうなれ ば、平地での未勝利馬が障害で勝つことはさらに厳しくなるはずだ。なんせ、勝負どころや最後の直線の脚が全く違うのだから。でもそれは勝負の世界で避けて通れない道であり、淘汰の歴史を繰り返してきたサラブレッドの宿命ともいえよう。
 さて、秋競馬が始まりこれからますます目が離せなくなっていく。私もこれまで以上に散財することだろう。トライアルレースやG1レースに隠れてしまうが、障害の重賞レースも開催される。他場の特別3レースが買えるようになった恩恵で、関東・関西両方の障害重賞レースをWINSで見ることができるはず。普段障害レースは見ないという方も、とりあえず重賞は見ていただきたい。そして障害の魅力を見つけて欲しいと思う。

原稿 ロイヤルチャージャー

第3回 引退後にものをいった親父の威光 サンデーウェル

今週はセントライト記念。3年前のこのレースを勝っているサンデーウェルは、現在は種牡馬になっているものの、重賞勝ちはこのレースのみである。種付け料には条件が設定されており、牡馬が生まれれば50万円で牝馬ならば無料となっている。この条件が好評で、初年度からおよそ60頭の種付けをしたらしい。しかし、この条件も人気の一端を担ったのは間違いないが、やはり父サンデーサイレンスの血を求める生産者が多いということだろう。今回は種牡馬についての考察をしてみたい。
サンデーサイレンスの種付け料は2000万とも2500万ともいわれている。社台グループならば種付けし放題だろうが、やはり、大部分を占める中小の生産者にはとても手の届かない価格だろう。じゃあせめてサンデー産駒の種牡馬をということで、サンデーサイレンスを父に持つ種牡馬は、父に負けず劣らず大人気である。主なところでは、無敗で引退したフジキセキ、ダービー馬タヤスツヨシ、皐月賞とマイルCSを制したジェニュイン、菊花賞馬でダービー2着のダンスインザダーク。そして先日JRAが購入して、来年から種牡馬になることが決まった皐月賞馬イシノサンデーなどがいる。サンデーサイレンスの初年度産駒が大活躍した年には、同じくサンデーの産駒だったエイシンサンディー(だったはず)という未出走の馬が、種牡馬になるという話しも出たものである。その後どうなったかは知らないし、少なくともその産駒を見たことはないが。冒頭で述べたサンデーウェルもそのような馬産地の要望に応えたものだろうし、これからもますますサンデー産駒の種牡馬は増えていくだろう。
しかし、年間の生産頭数は年々減少しているのだから、仔をも含めたサンデーの血統が幅を利かせれば、当然影響を受ける種牡馬が出てくる。特に内国産の種牡馬は、サンデー以降も続々と輸入される外国の種牡馬に押されっぱなしの状態が続いている。もちろんメジロライアンやメジロマックイーンなどはかなり頑張っているが、彼らは選ばれた少数であり、その他大多数は苦戦しているのが実状だ。先日、北海道の3歳戦でトドロキヒホウ産駒が勝ち上がったが、この超マイナー種牡馬産駒の勝利に、私はなんとなく嬉しくなってしまった。どうやらトドロキヒホウはヴェンチアの産駒らしいが、現役時代はどんな馬だったかはさすがに知る由も無い。他にもコバノキャンティという3歳馬が2勝をあげているが、これはカリスタグローリ産駒でそのカリスタグローリの父はブレイヴェストローマン。カリスタグローリは、種付け数の割にはハロードーリーなどそこそこ走る仔を出しており、私の好きな1頭でもある。
逆に、G1を勝っていても全く種付けの依頼が来ない種牡馬もいる。オグリキャップと名勝負を演じたバンブーメモリーもその中の1頭だ。彼の父はモーニングフローリック。グレイドーン、エルバジェとさかのぼるこの血統は、今の日本では少々時代遅れとなってしまっている。彼はマイルCS、スプリンターズSと2つのG1を勝ちながら、初年度から数頭しか種付け依頼が来なかったという。同じくエルバジェへとさかのぼれるダービー馬アイネスフウジンも、先日、種牡馬を引退したらしい。こちらはイサミサクラやヘッドラインなどそこそこ走る馬を出していたので、残念でならない。
中小の生産者が生き抜くためには、売れるイコール人気のある種牡馬に群がるのは当然といえる。経済的に無理な場合は、その種牡馬の仔や同じ系統の種牡馬をつけるのもいたしかたない気もする。その時代時代の"はやり"があるからだ。しかし、ここでサンデーを例にとって考えてみる。サンデーやその仔たちフジキセキ、ジェニュインなどに生産者が群がれば、当然その血を受け継いだ繁殖牝馬も急増する。その牝馬には当然サンデーやその仔たちは付けられない。極端な近親交配になってしまう。そのようにして、サンデーの血を受けた牝馬が増える一方で、父系としてのサンデーの血は急速に衰えていくだろう。急速にといっても10年くらいは間違いなくサンデーの天下が続くはず。問題はその後である。アメリカでは、イギリスにバカにされながらも地道に自分たちの血統を守ってきた。そして、その血統が、外国から輸入された牝馬に今までとは違う活力を与えて次々と名馬を生み出し、今のアメリカ血統の成功を導いたのである。日本古来の血統を守ることは、近い将来、日本の馬産が血の飽和状態に陥った時、救世主になりうる可能性を秘めている気がしてならない。
今回は長い上に、ちょっとマイナーでディープでお堅いと四拍子もそろってしまい恐縮している。あくまで私の個人的趣味で書いているということでお許し願いたい。

原稿 ロイヤルチャージャー

第4回 クラブ馬にまつわる喜びと悲劇 タイキシャトル


ここ最近クラブ馬の活躍が顕著である。クラブ馬とはいわゆる一口馬主の制度であり、その会社が持っている馬に対して、ある程度の口数に分け会員を募集するものである。有名なところでは大樹レーシングホース(冠名タイキ)、社台レースホース(昔はダイナの冠名を使っていたが今は特に使っていない)、老舗では友駿ホースクラブ(冠名シチー)などがあり、現在10数社ほど存在する。特に大樹の馬であるタイキシャトルは5000万円(100口分割で一口50万円)で募集されたが、種牡馬としての売却代金などを含めると累計で1口当たり1000万円ほどの配当があるといわれている。しかし、出資した馬がタイキシャトルのように成功するのは稀であり、大半はマイナス収支になってしまうことを考えておいたほうが良いだろう。ということで、今回から数回に分けて、クラブ馬について書いていきたい。
さて、このようなクラブの一つにラフィアンターフマンクラブがある。こう書くとわかりづらいだろうが、マイネルやマイネの冠名のクラブと言えばわかってもらえるだろう。最近ではマイネルマックスが朝日杯3歳Sを制覇し、先日は札幌3歳Sでもマイネルプラチナムが優勝した。このクラブの特徴といえばとにかくデビューが早く、3歳戦から活躍できることと、マイナー血統で安い馬でもよく走るといったところだろうか。しかし、数年前、なんとマイネルとしては異例の1億円で募集された馬がいた。シアトルスルー産駒で、種牡馬としての価値も価格にプラスされているという自信の馬だったようだが、その馬(名前は忘れてしまった)は見事にデビュー戦を勝ったものの、その後は故障や気性難にも悩まされ、大成できなかった(今も現役かどうかは定かでない)。逆に、JOYではザゴールドという馬がいたが、この馬はJOYの同期募集馬の中では最も安かったという(不確かな記憶で申し訳ないが800万円くらいだったはず)。それもそのはず、父親がモガミプレジデントという馬で、その当時中央ではザゴールドが唯一の産駒だったらしい。ところが、その馬が短距離の準オープンやオ ープンで好戦するまでになったのである。800万円ならば2勝すれば馬代金の元は取れるわけで、さらにマル父手当て(正確には父内国産馬奨励賞だったはず)などもつくので、大きな黒字になったことだろう。
先述のタイキシャトルの他にもタイキの馬はよく走っている。タイキブリザード、タイキエルドラド、タイキウルフ、タイキデューク、タイキマーシャルなどすぐ思いつくだけでも、オープンや重賞で活躍した馬がこれだけいる。クロフネミステリーもタイキで1度募集されたのだが、父親のクレバートリックが、その当時あまり知られていなかったせいか、一口も売れず会社で持ったためタイキの冠名がついていないのだそうだ。しかしタイキはマル外中心のため(内国産も募集されているが)、関税などの関係もあり募集価格はやや高めだし、マル父手当てはもちろんのこと混合戦出走手当て(内国産馬所有奨励賞)も貰えない。これが意外と大きいのである。それでもオープンの1つや2つ勝てば黒字にはなるだろうし、タイキシャトルのような馬に当たれば大儲けとなる。要は安いマイナーマル父馬でのローリスク・ローリターンか、高いマル外でのハイリスク・ハイリターンかということだろう。活躍馬を見出すには、馬を見る目と運が必要ということだろうが、いくら馬を見る目を養ってもハズレを引き当てることも多々あるだろうし、そのクラブで募集する同世代に何頭もオープン級は出ない。ま た、抽選に外れる場合もあるだろう。結局、活躍する馬を引き当てるには運の占める割合が非常に大きいので、投資と考えて出資するのはあまり向かないとは思う。未勝利、場合によっては未出走で終わっても、「またダメだったよ」と笑っていられる心のゆとりと、何といっても馬を愛する気持ちが必要だろう。
次回もクラブについて、おそらくはクラブの懐具合と、グリーン・ロード両クラブのちょっとしたトラブルのことを中心に書いていこうと思っている。

原稿 ロイヤルチャージャー


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