騎兵の書・JRA編

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第5回 クラブ馬にまつわる喜びと悲劇 その2



今回も引き続きクラブや一口馬主の事について書いていこうと思う。前回予告したとおり、まずはクラブのちょっとしたトラブルについて。
数ある一口クラブの中にグリーンファームがある。昔からあったクラブのようで、私はリニューアルしてからの事しか知らないが、その時の広告での触れ込みが印象に残っている。新生グリーンファームのウリは、エイダン・オブライエン調教師が馴致や初期調教を施した馬を連れてくるというものだった。オブライエン調教師は言わずと知れた世界に名だたる名調教師である。そして血統的にもかなり良いものを揃えていたようだ。良血マル外ということで値段は高かったが、それを差し引いても魅力的な馬が揃っていた。クラブリニューアルの第1期馬がスルーオグリーン、ブラボーグリーン、グリーンスターボウ、
グリーンプランなどで、特に前記2頭は重賞で2着に入るなど活躍中である。
そして次の年の募集。今年も同じようにオブライエン調教師と良血マル外を前面に押し出した広告がお目見えした。今年もなかなかいい馬がいるなと思いつつ、ふと目に入ったのは、「ロードサラブレッドオーナーズ」の文字だった。広告の印象も、募集馬の特徴も去年のグリーンとまったく同じ。しかしロードなのである。これはどういうことなのかと情報を収集していくうちに、おぼろげながら話しが見えてきた。グリーンファームはリニューアルに当たっての準備や取り引きなどの一切を、ほぼ一人の人物に任せていたようである。そしてその人物(仮にA氏とする)は正社員ではなく派遣社員の類だったようだ。そして初年度は成功。A氏は次に2年目の募集産駒を決めて上に諮った。ところが上の人物は仕入れ値が高すぎると思ったらしい。結局、もめにもめた末にA氏はロードホースクラブへ会員データなど共に去っていった。そしてA氏が目を付けていた馬たちはロードで募集される事となった。この事件は、一部スポーツ新聞などにも取り上げられていた様だし、国際政治学者の舛添氏も会員データが流出した事についてGallopで言及していたが、結局たいした議論も起きないまま終わっ てしまった。今でも両クラブにこの問題について問いただすと、あやふやな回答しか帰ってこず、適当にごまかされてしまうらしい。
さて、困ってしまったのは会員である。グリーンファーム(というよりA氏個人)は会員との交流を積極的にはかり、Niftyの競走馬オーナーズフォーラムの会議室にも積極的に参加していた(ほとんどの会議室は、会員が持ち馬について語らうだけで関係者は参加していない)。その会議室で2年目の募集馬について情報を聞き、入会した人もいるらしい。また、良血マル外が毎年買えると思って入会した人が大半のはず。じゃあ、新たにロードにも入会すればいいじゃないかと思う人もいるだろうが、入会金や毎月の会費、馬の維持会費(いわゆる預託料)そして募集馬の代金と、クラブを一つ増やすにもかなりの出費が伴うのである。ただ馬代金だけ払えばいいというわけではないのだ。グリーンの会員にとってはまさに寝耳に水の出来事だったろう。
ロードアックス、レディボナンザ、ロードハイスピード、これらはロードの改革初年度の募集馬である。おそらくはグリーンで募集されていたであろう馬たち(もちろん全部が全部そうだとは限らないが)ともいえる。周知のとおりロードアックスはいきなり3連勝して重賞を獲得する活躍を見せた。もちろんグリーンも急きょ探して募集した馬の中から、グリーンプレゼンスやセレクトグリーンなどの活躍馬が出ている。以前の、商売が前面に押し出ていた感のある、A氏がいた当時のグリーンよりも今のグリーンのほうがいいという人も結構いる。しかし、募集馬が走ったからといって会員の信頼がすぐ戻るわけではない。特に今回の問題は、誰に責任があるのかがうやむやになってしまった感がある。この不況の時代、各クラブが会員獲得に激しい競争を繰り広げている中、もし再びこのような不祥事が起こったら、クラブとして生き残ってはいけないだろうし、そのようなことがないように願っている。

原稿 ロイヤルチャージャー

第6回 珍名馬 〜 活躍した馬、名前負けした馬


競走馬には様々な名前がつけられている。しかし、わずか数十年の歴史の日本競馬でも、常に百頭単位の馬を持っている馬主にとっては、付ける名前が思い浮かばなくなっていることだろう。冠名(エイシン、メイショウなど)を使っている馬主ならばなおさらだ。その影響なのかは知らないが、最近、俗に珍名馬と呼ばれる馬が増えている。そこで、今回は私の独断でそのような馬たちを紹介したい。
私が最初に変な名前だなと思ったのがマチカネタンホイザである。マチカネは馬主が使用している冠名で待兼山の待兼をとったものだ。この馬主は珍名馬の草分け的存在ともいえる人で、マチカネの馬は、まともな名前の馬のほうが少ないくらいだ。マチカネタンホイザに関しては、馬名は9文字以内というJRAの規定の影響を受けた馬である。本当はタンホイザーとしたかったのだが、やむを得ずといったところだろう。エクセレトシャトーなども同類であろう。エクセレントでは文字数オーバーになってしまう。なぜ9文字以内という規定になったのかはよくわからないが、私はもっと文字数を増やしてもいいと思っている。11、12文字程度でもいいのではないか。JRA側は乗り気ではないらしいが、外国から遠征してくる馬はカタカナ表記では長くなってしまうものの、競馬新聞などではきちんと対応しているので問題はないはず。まあ、他の理由もあるかもしれないし、早急に検討するような事でもないのだが。
さて、最近ではちょっと以前の勢いがないマチカネよりも、小田切氏という馬主のほうが珍名馬は多い。ドングリ、メロンパン、ロバノパンヤなどなど。いざ文章を書くとなるとなかなか思いつかないが、まだまだ面白い名前の馬がいるはずである。今年はギャフンという3歳馬がいるという。JRAも頭が柔らかくなったという事だろうか。他の馬主の馬で印象に残っているものといえばオレノデバン、オレニマカセロ、オレシカナイのオレ3人(馬)衆やメロンチャン、ホンキノワタシなどがいるが、わたしの今一番のお気に入りがヨルノテイオウである。現在は福島の未勝利サバイバル戦で頑張っているが、あと1歩のところで勝ちきれない。なんとか勝ち上がって現役を続けて欲しいものである。他にもう1頭気になるのが、ホッカイドウ競馬のオーバミツコという馬である。馬なのに完全に人名である。チヨダマサコ(ニッポーテイオー、タレンティドガールの母)を真似たのかは定かでない。はたして、彼女のような偉大な馬になれるかは私の知るところではないが。
ところで、ここのところ冠名の使用をめぐってちょっとした議論が起こっている。冠名は、馬主が自分の馬をアピールしやすいし、特にクラブ馬にとっては格好の宣伝となる。
その反面、「冠名+父名の一部」など、簡単だが味気のない名前が増えている。競馬会(馬主会)全体としては冠名をなくしていこうという風潮らしいが、なかなか簡単にはいかないだろう。もちろん冠名をやめて全部珍名馬にしろなんて事をいっているわけではない。昔の馬のように、かっこいいと感じる名前の馬がもう少しいてもいいと思う。かっこいいと感じる基準は人それぞれだが、私はアローエクスプレス、ブロケードなんかが好きだ。少なくとも「冠名+父名の一部」などで感銘を受ける人はあまりいないだろうし、このような小さなことを変えていくのも、決して無駄にはならないだろう。

原稿 ロイヤルチャージャー

第7回 海外遠征の挫折と成功



先日、シーキングザパールとタイキシャトルが海外のG1レースを相次いで制覇した。一般のニュース番組にも取り上げられており、大変な快挙だった事は間違いない。ただ、これまでの多くの実力馬の遠征、そして挫折を見てきた者にとっては、「やっと勝ったか」という思いだったろう。今回は海外遠征について書いていきたい。
あまり古い話しはわからないが、ちょっと変わった例としてはシリウスシンボリが挙げられる。シリウスシンボリはモガミの産駒でダービーを勝っているが、この馬は約1年に及ぶ長期遠征・滞在を敢行した。長期間滞在して、現地の環境に慣れさせるのがいいという判断だったのだろう。試みは良かったものの結局、結果を出す事はできなかった。そして最強馬シンボリルドルフでさえ、異国の地では敗れ去っている。女傑ヒシアマゾンも、レース直前の追い切りで故障を発生し、出走する事無く戻ってきた。突き詰めれば、異国の馬場、つまりは環境に完全に適応できなかったという事だろう。サクラローレルも然りである。この馬の場合は、管理していたのが当時調教師になりたての小島太調教師だったことが、多少なりとも影響があったと個人的には考えているのだが。このように海外遠征においてはほとんどいい話を聞かないが、私が最初に「おっ」っと思ったのがクロフネミステリーの遠征である。この馬は以前書いたように、冠名こそついていないが皆さんご存知のタイキの馬である。一口も売れなくて会社持ちとなったのだが、それが幸いして比較的気軽に遠征に踏み切る事ができたようだ。確 かアメリカのG2に出走して結果は3着。
日本では準オープンあたりで好戦を繰り返していた程度の馬だっただけに、こういう遠征もあるんだと感心した。その後タイキブリザードが2年にわたってブリーダーズカップクラシックに参戦しているが、やはりアメリカの最高峰のレースだけに見せ場なく終わっている。しかし、ここで学んだ事が先日のタイキシャトルの成功につながっているのだろう。
よく、海外遠征の難しさに環境への適応が挙げられる。ヨーロッパの馬、例えばフランスの馬だと、強ければ海を渡ってイギリスへ遠征したりするのは日常茶飯事であり、ゴドルフィン軍団の馬は冬の間は暖かいドバイで過ごすというのが、半ば通例となっている。このように海外の馬は長距離輸送(つまりは空輸)に慣れており、またそれに適応できないととても一流馬にはなれない。日本は輸送はすべて陸路で行えるし、時間もそうかからない。また、北海道や小倉に遠征しても、海外へ行くように著しく環境が変わるという事はない。なんたって同じ日本という国なのだから。このあたりに日本馬の海外遠征の成功率が低い原因があるのだろうと思う。環境への適応力は、生まれ持ったものもあるだろうし慣れもあるだろう。また、たとえ抜群の適応力と競走能力を持っていたとしても、検疫の問題がある。タイキブリザードはBC後にジャパンカップに出走する予定だったが、検疫の日数の関係で出走は無理だった。その時は特例という事で、出走できるようになっていたが、結局、一時的な措置で終わってしまった(タイキブリザードは疲れのため、結局JCには出走しなかったが)。仮に遠征で成功 を収めても、検疫のために日本で使いたいレースに使えないとなると、凱旋レースを期待していたファンの競馬への興味がそがれてしまう事にはならないだろうか。
さて、JRAから海外遠征の際の褒賞金の縮小案が発表された。海外レースの賞金は、G1といえども一部を除いて大半が日本とは比べ物にならないくらい少ない。そこで、海外遠征を奨励する意味で褒賞金制度を設けていたのだが、レースの格にもよるが来年から特別褒賞金に当たる部分が最大で5000万円もカットされる見通しだ。遠征を奨励しておきながら、褒賞金を削減するとは明らかに矛盾している。もちろんこの褒賞金自体も、もともとかなり高額といえば高額なのだが、遠征の間は検疫の期間も含めて日本のレースには出られないし、JRAも遠征して欲しいからこのようにある程度高額に設定したはず。不況で売り上げが落ちているとはいえ、果たしてファンはこれを納得できるだろうか。ましてや、海外遠征は年に何頭かしか行かないので、この褒賞金を削ってもとても意味があるとは思えない。もちろん売り上げだけが原因ではなく、競馬サークル内から改正を求める声があったというのだが、冒頭に述べた2頭がG1を制覇して、これからというときにJRA自身がこのような事をしていては、また昔のような日本に戻ってしまうのではと危惧している。

原稿 ロイヤルチャージャー

第8回 私が追いかけた馬たち

 

 いきなりだが、私がはじめて馬券を買ったのは、まだ競馬法に引っかかる身分のころだ(今もそうだが)。初めて的中した馬券はイイデザオウの単勝で、200円買っていた。その頃は当然、レース名などはわかっていないので、記憶を頼りに調べてみたところ、最後の直線で左から右に走っていた(つまり左回りだった)、雨で天気が悪く画面が暗かった、結構配当がついた。この3つから、私の初的中記念レースはどうやらアイルランドトロフィーだったようだ。それから競馬にどっぷりと浸かっていく事になるのだが、今回は私が追いかけ続けた馬について書いていきたいと思う。
 まず、有名どころではキョウトシチー。関西馬なので、条件馬のうちはお目にかかる事はなかったのだが(確か菊花賞には出ていたが)、ウインターステークスを勝ったあたりから注目していた。6歳時の武蔵野Sでは単勝を思いっきり買っていたのだが、キソジゴールドとメジロモネの併せ馬にあっという間にかわされて3着。そのあと帝王賞やアンタレスSでも人気を裏切って、当然私の懐も寒くなる一方だった。そんなこんなで、シーサイドOPから重賞に昇格したシーサイドSでは人気を落としていたが、ここで買わないわけにはいかないとばかり、単勝と馬連総流しで勝負。単勝1810円、馬連8070円をGETした。ちなみにシーサイドSはこの1回でエルムSに移行してしまったので、キョウトはシーサイドSの唯一の勝ち馬である。しかし、最近は地方遠征がほとんどで、中央で最後に走ったのは去年の武蔵野Sだっただろうか。追いかけてきた私にとっては、馬券がほとんど買えなくて残念だ。
 他に、ちょっとマイナーなところではアイショウユーも好きだった。この馬は芝ダート問わず活躍したアイオーユーの妹であるが、私が出会った時は、もう既に頭打ちの感がある500万下の条件馬といった印象で、札幌(函館かも)のダート1700mに出走してきた。近走の成績からは買える馬ではなかったが、一人旅ができれば逃げ切れるかも、という淡い期待を胸に単勝と馬連BOXで勝負。結果、単勝6000円弱、馬連8000円前後だっただろうか。この後もある程度追いかけたが、人気になる事も多く芝でも好走し始めたので、中穴を仕留めたものの心理としては「こんな低配当じゃ買えないよ」となり、追いかける事を止めてしまった。それでも上記の2頭は追いかけて1度は報われたが、いつもうまくいくとは限らない。
 いわゆる、馬券の相性が悪かった馬にビッグワンレディーがいる。キンググローリアス産駒の牝馬で、この血統らしく3歳でデビューしダートで2着、1着とすぐに勝ち上がった。2戦とも馬券のほうはハズレだった。その後も買えば来ない、買わなきゃ来るの繰り返しで、一時追いかけるのを止めてしまった。再び出会った時には900万条件にいたが、そこで穴をあけ(もちろん馬券は取れなかった)、やっぱりこの馬とは相性が悪いなとあらためて痛感した。そして昨年北海道に遠征してきた。準オープンではまったく通用しなかったが、北海道で900万下に降級。絶対に激走する時がくると信じて、その機会を待っていた。こちらでの緒戦はダート1000m。適距離で降級戦という事でやや人気にはなっていたが、休み明けが響いたようで敗退。そのあと2レースはダート1700mを使われたが、距離が長く惨敗。そして次のダート1000m。私はここだ!と思った。前3走は敗因がはっきりしている。この条件は既に勝っており、枠順も1枠1番。距離も1000mなら粘り切れる。抜群のダッシュ力を誇るビッグワンレディーには、もうこれ以上の好条件はない。しかし、である。土曜の レースだったのだが、学校では検定試験を前にして当然のごとく土曜も授業。昼休みにWINSへ行くという技も考えたが、日ごろの過酷な授業カリキュラムで疲れきっていた私には、その気力はなかった。帰宅後、レースのビデオを見てどれだけ後悔した事か。ビッグワンレディーは抜群のダッシュから2着に逃げ粘り、1着馬が人気馬だったのにもかかわらず万馬券となった。その後、同馬は連対することなく、気がつけば引退していた。
 私が追いかけ続けた馬はまだまだいるが、かなり個人的な話題なのでこれくらいにしておく。どうも最近堅い話ばかり書いてきたが、実を言うとこのような話題のほうが本質的には得意ではある。ところで最近、ペースが落ちて週1の掲載ではなくなってきているが、なんとかこれ以上ペースが落ちないように頑張って書いていきたいと思っている。

原稿 ロイヤルチャージャー


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